大リーグの試合数はなぜ162試合?過酷日程とNPBとの違いを徹底解剖
メジャーリーグベースボール(MLB)のシーズンが開幕すると、日本の野球ファンが毎年驚かされるのがその圧倒的な過密日程です。大リーグのレギュラーシーズンにおける試合数は、各球団年間162試合。日本のプロ野球(NPB)の年間143試合と比較しても19試合多く、約6か月という限られた期間の中で、休養日をほとんど挟むことなく試合が繰り広げられます。
広大な北米大陸を行き交う過酷な移動、4つの異なるタイムゾーン(時差)、そして容赦なく組み込まれる連戦の数々。なぜメジャーリーグはこれほど膨大な試合数を設定しているのか、そして選手たちはその過酷な日程にどう立ち向かっているのか。2026年の最新事情やポストシーズン進出の仕組み、選手の身体への影響まで、その背景にある歴史と興行構造を徹底取材に基づき解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:大リーグのレギュラーシーズンは全162試合。約185日間で消化するため、実質的な公休日(移動日含む)は月にわずか2〜3日程度しかない。
- 要点2:162試合制が定着したのは1961〜1962年。球団拡張(エクスパンション)と総当たり興行収入の最大化というビジネス構造が根底にある。
- 要点3:広大な移動距離と「中4日」の先発ローテーション、ダブルヘッダーが肉体を削る一方、ポストシーズンを含めると年間最大180試合超に及ぶ。
【徹底比較】大リーグと日本プロ野球(NPB)の試合数はなぜこれほど違うのか?
日米のプロ野球を比較した際、真っ先に目につくのが試合数とその消化ペースの決定的な差です。日本のプロ野球(NPB)は現在、セ・パ両リーグともに年間143試合制を採用しています。一方、MLBは年間162試合。数字の上では「19試合の差」ですが、実態としての選手への負荷は、その数字以上の隔たりがあります。
日本の場合、毎週月曜日が原則として休養日・移動日として確保され、「火〜木・金〜日」の週6試合ペースが基本リズムとして確立されています。しかし大リーグには定期的な定休日が存在しません。スケジュールの都合上、13連戦や20連戦といった長期連戦が頻繁に発生します。
| 比較項目 | 大リーグ(MLB) | 日本プロ野球(NPB) | 現場の実感・負荷の違い |
|---|---|---|---|
| レギュラーシーズン試合数 | 162試合 | 143試合 | MLBが19試合多く、予備日消化の余裕が極めて少ない |
| シーズン消化期間 | 約185日間(3月下旬〜9月末) | 約185〜190日間(3月下旬〜10月上旬) | ほぼ同じ期間内でMLBの方が20試合近く多く戦う |
| 週あたりの休養日 | 不定期(月2〜3日程度) | 原則として毎週月曜日(週1日) | NPBは週単位で調整可能だが、MLBは疲労が蓄積しやすい |
| 先発投手の登板間隔 | 中4日(5人ローテーション) | 中5〜6日(6人ローテーション) | MLB先発陣は年間30〜33試合登板、肩肘の消耗が激しい |
| ポストシーズン最大試合数 | 最大22試合(全4ステージ) | 最大16試合(CS〜日本シリーズ) | 世界一まで勝ち進む球団は年間通算180試合超に到達 |
NPBでは先発投手が「中6日」で週に1回投げるスタイルが定着していますが、メジャーでは「中4日」で年間30回以上のマウンドに上がることがエースの最低条件とみなされます。野手に関しても、主力選手は162試合のうち150試合以上に出場し続ける強靭なフィジカルが求められます。

なぜ「年間162試合」なのか?歴史的変遷と興行ビジネスの構造的理由
大リーグの試合数が162試合になった背景には、単なる偶然ではなく、綿密な興行ビジネスの計算とリーグ拡張(エクスパンション)の歴史が存在します。
もともと大リーグは20世紀初頭から長らく年間154試合制を採用していました。当時はアメリカン・リーグ、ナショナル・リーグともに各8球団で構成されており、「自チーム以外の7球団×22試合=154試合」という極めて対称的で均等な対戦スケジュールが組まれていました。名手ベーブ・ルースが1927年に記録したシーズン60本塁打も、この154試合制の中で生まれた大記録です。
転機が訪れたのは1961年です。アメリカン・リーグが球団数を8から10へと拡張した際、各チームとの対戦数を均等に保つ計算式として「9球団×18試合=162試合」が採用されました。翌1962年にはナショナル・リーグも球団拡張に伴い162試合へ移行し、現在の数字のベースが完成したのです。
その後、球団数は現在の全30球団まで増加し、1997年のインターリーグ(交流戦)導入、さらに2023年からの「全30球団総当たりスケジュール」への改編など、対戦カードの内訳は時代とともに大きく変化しました。しかし、「162」という総試合数だけは半世紀以上にわたり一度も減らされていません。
その最大の理由はスタジアム収益と巨額の放映権ビジネスです。各球団にとってホームゲーム81試合の入場料収入、スタジアムでの飲食・物販、そして地域放映権料は球団経営の根幹です。試合数を削減することは、選手会にとっても年俸総額の縮小に直結するため、過酷さを理解しつつも労使双方の経済的利害が一致して維持され続けています。
【実態検証】時差・移動距離・ダブルヘッダー|現場が語る「過酷日程」の真実
メジャーリーグの過酷さを語る上で、単なる試合数以上に選手を追い詰めるのが「移動距離」と「時差」の複合的な負荷です。
北米大陸は東海岸から西海岸まで約4,500キロ離れており、国内に4つの標準時(東部、中部、山岳部、太平洋)が存在します。遠征に出るチームは、年間でおよそ4万〜7万キロ(地球1周半〜2周分近く)を専用チャーター機で移動します。特に西海岸のチームが東海岸へ遠征する場合、3時間の時差が体内時計を狂わせます。
かつてメジャーに挑戦した日本人投手が、自著や特別番組のインタビューで語った証言は現場の過酷さを如実に物語っています。
「ナイターが22時半に終わり、シャワーを浴びて深夜1時に空港から離陸する。次の街に着いたときには時差のせいで朝の5時。そのままホテルで2時間だけ仮眠を取り、夕方には球場へ向かう。シーズン後半は朝起きた瞬間から身体が鉛のように重く、自分が今どのタイムゾーンにいるのかすら分からなくなる」
さらに気候による雨天中止が重なると、過酷さに拍車をかけるダブルヘッダー(同日2試合開催)が組まれます。コロナ禍の一時期に導入されていた「7イニング制ダブルヘッダー」は廃止され、現在は原則として通常通り9イニングの試合を1日に2試合こなすルールに戻っています。真夏の炎天下で1日6時間以上ユニフォームを着てグラウンドに立ち続けることは、日常的なコンディション管理の概念を根底から覆す過負荷と言えます。

大谷翔平の出場試合数が示す異次元のタフネスとフィジカルマネジメント
この極限環境において、日本のファンに改めて衝撃を与えたのが大谷翔平選手の記録的な出場ペースです。
大谷選手は二刀流として投手で先発登板を重ねながら、指名打者(DH)としてほぼ全試合に出場するシーズンを継続してきました。2021年は158試合、2022年は157試合、2023年は故障離脱がありながら135試合に出場。ドジャースへ移籍した2024年以降も、打者に専念したシーズンでは159試合に出場し、前人未到の記録を打ち立てました。
一般的に、メジャーの指名打者であってもこれだけの試合に出場し続けることは稀です。移動日の睡眠時間確保、球場内での最新リカバリー機器の活用、徹底した食事制限など、常軌を逸した自己管理があって初めて成り立つ数字です。大谷選手自身が会見で語る「睡眠を最優先する」という哲学は、年間162試合のロードトリップを戦い抜くための最も本質的な防衛策と言えます。
年間スケジュール解剖|スプリングトレーニングからワールドシリーズまでの全行程
メジャーリーガーの1年間は、レギュラーシーズンだけに留まりません。年間の全体スケジュールを俯瞰すると、戦いは2月中旬から11月上旬までほぼ休みなく続きます。
1. スプリングトレーニング&オープン戦(2月中旬〜3月下旬)
各球団はフロリダ州(グレープフルーツ・リーグ)またはアリゾナ州(カクタス・リーグ)に集結し、約6週間のキャンプを行います。ここではオープン戦が約30試合組まれ、選手たちは過密日程に耐えうる身体を急ピッチで作り上げます。
2. レギュラーシーズン(3月下旬〜9月末)
2026年最新の公式戦日程においても、3月末の開幕戦から9月末の最終戦まで、約185日間で162試合を戦い抜きます。7月中旬には唯一の公式なブレイクとなるオールスターゲーム期間(約4日間の休養)が設けられていますが、選出されたトップスターには完全な休養は与えられません。
3. ポストシーズン&ワールドシリーズ(10月上旬〜11月初頭)
162試合を勝ち抜いた精鋭チームのみが進出できるポストシーズンは、まさに短期決戦のトーナメントです。現行ルールにおけるワールドシリーズ出場条件とトーナメント構成は以下の通りです。
- ワイルドカードシリーズ:各リーグ4チーム(地区優勝の第3シード+ワイルドカード3チーム)による3戦2勝先勝方式
- ディビジョンシリーズ(地区シリーズ):上位2シードと勝ち上がり組による5戦3勝先勝方式
- リーグチャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定戦):7戦4勝先勝方式
- ワールドシリーズ:両リーグの覇者による頂上決戦。7戦4勝先勝方式
ワイルドカードから勝ち上がって世界一に輝くチームの場合、ポストシーズンだけで最大22試合を戦うことになり、オープン戦(約30試合)を含めた年間総試合数は210試合以上に達します。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
大リーグの試合数に関して、日本のファンの間でしばしば生じる誤解についてファクトを整理します。
誤解①:「移動はチャーター機だから新幹線移動の日本より楽である」
これは事実と異なります。チャーター機は移動手続きこそスムーズですが、気圧の変化に長時間さらされ、3〜4時間の時差を伴う長距離フライトは選手の自律神経に深刻なダメージを与えます。新幹線で移動し、時差のない日本国内の遠征とは肉体的負荷の質が根本的に異なります。
誤解②:「162試合制は近いうちに削減される可能性がある」
選手の健康保護を訴える声は常に存在するものの、現実的な削減議論は進んでいません。前述の通り、1試合削減するごとに球団が得られる数十億円規模の売上(放映権・入場料)が消失するため、サラリーの高騰を維持したい選手会側も受け入れ難いという構造的ジレンマがあるためです。
【プロの結論】スポーツ社会学と労働環境の視点から見る162試合制の功罪
大リーグの162試合制は、スポーツ社会学および労働環境の観点から見ると「資本主義的エンターテインメントの極致」と位置付けることができます。
巨額の契約金を勝ち取るスーパースターの華やかな姿の裏には、年間162試合という過酷な消耗戦に身体を差し出す労働契約の厳然たる現実が存在します。投手の肘靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)の急増に象徴されるように、近年の球速上昇と過密日程の掛け算は、人間の生体的な限界点に達しつつあります。
このシステム下で成功を収めることができるのは、卓越した技術だけでなく、「徹底した自己境界線の構築(オン・オフの完全な遮断)」と「迅速な疲労回復力」を兼ね備えた極一握りのアスリートに限られます。技術頼みでフィジカルの耐久性や精神的な切り替えが苦手な選手にとっては、MLBの162試合制は過酷極まりない消耗の場となり得ます。
【大 リーグ 試合 数】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:メジャーリーグ史上、162試合より試合数が少なかったシーズンはありますか?
A1:あります。近代野球では、選手会のストライキが発生した1981年や1994〜1995年、そして新型コロナウイルスの世界的大流行により開幕が大幅に遅れた2020年シーズン(各チームわずか60試合に短縮)などが例外的なシーズンとして記録されています。
Q2:雨で中止になった試合はどのように消化されますか?
A2:原則として、同一カードの遠征期間中にダブルヘッダー(同日2試合)として組み込まれるか、共通の予備日を利用して消化されます。ただし、シーズンの最終盤で順位決定やポストシーズン進出に一切影響がないと判断された場合に限り、消化されないままシーズンが終了することもあります。
Q3:ポストシーズンの成績は通算の個人記録(打率や本塁打数)に含まれますか?
A3:含まれません。MLBの公式ルールにおいて、レギュラーシーズン(162試合)とポストシーズンは明確に区別されており、本塁打王などのタイトル争いや生涯通算成績はすべてレギュラーシーズンの数字のみで集計されます。
まとめ:過酷な162試合を戦い抜くメジャーリーグの醍醐味
メジャーリーグの「年間162試合」という過密日程は、興行の歴史とビジネスの要請が生み出した、過酷なサバイバルレースの舞台です。広大な北米大陸の移動、時差、中4日の先発ローテーションという極限状態の中で、選手たちは己の限界を超えてプレーを続けています。
日本のプロ野球とは全く異なるレギュレーションと環境を理解することで、海を渡った日本人選手たちが残す1勝、そして1本のヒットの重みがより鮮明に見えてくるはずです。2026年シーズンもまた、全162試合のドラマの結末に世界中の野球ファンが熱狂することでしょう。 (出典: 大 リーグ 試合 数(Yahoo!ニュース))